多様性の起源と維持のメカニズム
 
(1) 研究の趣旨・目的

 本書で紹介する話題は、国際高等研究所(京都府)でおこなった極めて学際的なプロジェクト研究「多様性 の起源と維持のメカニズム―多様性の新しい理解を目指して」において議論された内容である。
 このプロジェクトには、数理科学、物理学、情報科学、地球・惑星科学、医学、社会学、経済学など広範な分野の専門家が参加した(巻末の表に、このプロ ジェクトに参加した人たちを紹介する)。これら諸分野に通底する「多様性」という問題意識に関して、多くの事例といろいろな研究手法を持ち寄ることから議 論が始まった。それぞれの分野の学術用語や基礎概念には、共通点があると同時に微妙な(ときには本質的な)違いがある。異分野の「言葉」を相互に理解する プロセスは、極めて刺激的であり新鮮であった。たとえば、自然科学者が「階層」というとき、その底部にミクロの普遍的階層をイメージする。物質のミクロ階 層は「粒子」という普遍的なアイデンティティによって表象される。これが集団となって中間あるいは上位のマクロな階層で多様性が生起するという見方だ。逆 に社会科学者は、上位に「個人」というミクロの階層を置き、個という要素こそが多様性の起源だと考える。社会というマクロ階層に、個別性から共約されノー マライズされた普遍性が現れるというイメージである。このような「反転」があっても、階層という構造で多様性を理解しようとするならば、共通の考え方が導 かれる。すなわち、それぞれの層に現れる不均一性、共存する「相」のせめぎ合いや「隙間」という共時的構造が多様性を表象している。不均一性は、層と層と を平均的(加算的)に連接することを不可能にしている――このような層のトポスがイメージされるのである。
 本書に採録した内容は、国際高等研究所の開設10 周年記念事業の一環としておこなわれた公開講演会(2003 年11 月15日;国際高等研究所レクチャーホール)において発表された報告とパネルディスカッションをもとに編集したものである。(2004 年3 月)

(2) 研究会の構成 (2003 年当時)
研究者代表 吉田 善章 東京大学大学院新領域 創成科学研究科
メンバー 伊藤 伸泰 東京大学大学院工学系研究科

北原 和夫

国際基督教大学教養学部

鳥 海  光弘 東京大学大学院新領域創成科学研究科

似田貝香門

東京大学大学院人文社会系研究科

大坂  元久 日本医科大学老人病研究所生命情報解析科

合原 一幸

東京大学大学院新領域創成科学研究科

郷原 一寿

北海道大学大学院工学研究科

西森 拓

大阪市立大学理学部

田中 久陽

電気通信大学工学部

神谷  和也 東京大学大学院経済学研究科
石 村  直之 一橋大学経済学部



200 多様性の起源と維持
のメカニズム
141頁
書籍版
(図録デー タ集CD付)

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