種族維持と個体維持のあつれきと提携
 
(1) 研究の趣旨・目的

 「種族維持と個体維持のあつれきと提携」は2000年度より2002年度まで3年間行われた課題研究である。
 表題にある「種族維持」という語は多少前近代的響きを有する嫌いはあるが、ここでは個体の行う主要な生命活動の一つである縦方向の、すなわち世代を越える、ゲノムの伝達を指す。
 生物の個体が「生きている」時には、互いに独立した二つの営み、自らの活動と生命の保全である個体維持のための生命活動、およびここで用いる意味での種族維持のための生命活動とを行う。この二つの生命活動を分担する細胞群である生殖細胞と体細胞は、互いに異なる性質を有し、両者は全く異なると理解されてきた。
 本研究では、まず、それら二つの細胞群は如何に異なり、如何に類似するか、そして同一個体に両者が共存するとき、両者は如何なる相互作用をするか、の2点を現代発生生物学、細胞学、遺伝学の視点に立って議論した。必要に応じて分類学、系統学、生態学の立場からも議論した。その過程で、体細胞の関与する種族維持の営みをも深く掘り下げる結果となった。しかし、生物集団としての「種」の維持については議論の対象としなかった。
 本報告書は、このような研究活動全般での議論をまとめたものであり、この間に行った国内外のシンポジュウムなどの記録も含んでいる。


目  次
  • まえがき
  • [I] 国際高等研究所と生物学研究
  • [II] 研究組織
  • [III] 次世代を作る細胞
    • 1. 生殖細胞
      • 1-1 生殖細胞形成の様式は多様である
      • 1-2 生殖細胞形成様式: いくつかの実例
        • 1-2-1 生殖質を持つ動物(生殖細胞は前成的決定される)
        • 1-2-2 生殖質を持たない動物(生殖細胞は後成的に決定される)
        • 1-2-3 植物
          • A. 花の形成
          • B. 植物の生殖戦略:分子機構と進化生態学(シンポジュウム)
    • 2. 次世代を作る体細胞
      • 2-1 再生と無性生殖による次世代の形成
      • 2-2 有性生殖と無性生殖の切り替え
    • 3. 次世代を作る細胞: まとめと議論
  • [IV] 生殖細胞に影響される体細胞
    • 1. 性分化
      • 1-1 体細胞の性分化
      • 1-2 生殖腺における生殖細胞と体細胞の相互作用
    • 2. 親子のあつれき国際シンポジュウム
      “Conflict and Compromise between Parent and Offspring”
    • 3.性行動(招待講演:長谷川真理子「人間の性と繁殖をめぐる進化的考察」)
  • [V] 引用文献
  • [VI]  参考資料 (随時参加者、実施研究集会リスト)
  • あとがき

(2) 研究組織 (2005年11月現在)
研究代表者 岡田 益吉 国際高等研究所副所長
基幹メンバー 阿形 清和 京都大学大学院理学研究科教授

浅岡 美穂

国立遺伝学研究所助手(記録担当)

石川 冬木 京都大学大学院生命科学研究科教授

岡田 清孝

京都大学大学院理学研究科教授

岡田 節人 JT生命誌研究館名誉館長

樫川(吉田) 真樹

筑波大学生物科学系リサーチアソシエイト(記録担当)

川村 和夫 高知大学理学部教授
小林 悟 自然科学研究機構基礎生物学研究所教授
中川 久定 国際高等研究所副所長(随時参加)
長濱 嘉孝 自然科学研究機構基礎生物学研究所教授
星 元紀 慶應義塾大学理工学部教授
松居 靖久 東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センター教授
松原 謙一 DNA チップ研究所 代表取締役社長(随時参加)
三井 恵津子 サイエンスライター(社会貢献・啓蒙出版担当)
矢原 徹一 九州大学大学院理学研究科教授



211 種族維持と個体維持のあつれきと提携
89頁
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