出版物詳細カード
文 献No. S-1
著者名 沢田 敏男
タイトル名 美しいダムと水環境づくり(Study)
内 容について ※本文の最初の文章を掲載いたします。
まえがき
 21世紀に向けて、科学技術はますます進展することであろう。それとともに、芸術文化の振興が盛んとなり、いわゆる“サイエンス アンド アート”の時 代を迎えることになると考えられる。そして、科学技術的な理性と芸術的な感性との融合による新しい文化の創造ということが重要視されてくると考える。そこ で、ダムや水路のような水利構造物の計画、設計に携わる科学者、技術者としても、貯水、取水、導水、分水等といった水利施設としての本来具備すべき機能の ほかに、景観上からも人びとに心地よい感動を与えることのできるような構造物、つまり理性と感性を融合させたような文化的工作物を創造するよう心がけるこ とが大切である。私の脳裏に残る美しいダムとして、後述するフランスのローズランダム(Roselend Dam)がある。アルプスの大自然に調和したアーチとバットレスの複合ダムの景観は素晴らしい。また、1963年に完成した木曽川の犬山頭首工は濃尾平野 をかんがいする取水ダムであるが、景観設計に配慮し、構造、形状等に創意工夫をしており、国宝の犬山城や伊木山を水面に映した景色は、恰も“一幅の絵の如 し”と観賞され、広く親しまれている。要は人びとの心に、うるおいや豊かな感性を与えることのできるような水利施設を創造すること、それには理性と感性と を共に活性化させて、両者が作品の中で融合された形で表現できることである。
 また、我々がやすらぎとうるおいのある真に豊かな生活を実現するための環境づくりに、きれいな水や流れのあることが欠かせなくなってきている。文明の進 むにつれて、このような水の存在がますます重要になるであろう。今から110年程前(明治23年、1890)、琵琶湖疎水が開削された。京都から東京への 遷都に際し、京都の再興を図るための画期的な水利プロジェクトで、琵琶湖の水を大津から山科を経て南禅寺に至り、東山の山麓を伝い、銀閣寺から流れを北西 に転じ、鴨川を横断して堀川まで導水するものである。この琵琶湖疎水は、所々で美しい流れや桜並木の景観を創成し、広く市民に親しまれている。中でも、東 山山麓を流れる疎水に沿って、哲学の道ができている。これはハイデルベルクのネッカ河川岸にある哲学の道に模して、愛称されるようになったと聞くが、かつ て哲学者の西田幾太郎、田邊元先生等の先覚や学徒が散策し、逍遙した道である。この哲学の道が生まれたのも、静寂で美しい疎水の流れがあったからこそであ ろう。ここでも水が主役であると考えられる。
 ダムや水路の建設によってできる水面や岸辺を工夫活用して、親水公園やキャンプ場等を創設し、快適な親水性の空間を作り出すことが要望されるのである。
 なお、このようなダムの景観設計や親水空間づくり等のための予算が国の公共事業においても計上されるようになったことは、評価できることである。
頁 数 48頁
書籍版
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