開会挨拶
沢田所長に避けられない用件がはいったので、かわってご挨拶、というより歓迎の言葉を述べさせていただきたい。
私自身が国際高等研究所にくわわって3年程しか経過していないが、ここは、京都大学総長であった奥田先生を中核
として、パンフレットにあるように、独特の気概を持って、人類の未来と幸福のためにどういうことをすればいいかを
研究する場として、非常に高邁な考え方でつくられたものである。創設以来14
年近くが経ったが、この地に移ってから6年が経過し、ようやく軌道に乗ってきたというのがわ たしたち内部の者の偽れざる印象である。
現在、北川副所長と、ゲノム関係の仕事をしている松原副 所長の3人で、沢田先生を補佐しながら副所長役を務めてい
る。この場所は率直に申し上げて決して交通の便利な場所で もなく、はじめての方は遠いという印象を持たれることであ
ろう。しかし、少し大袈裟ではあるが、窓から外を眺めると 時間が止まっているかのようで、静かにものを考える場にふ
さわしいという印象を持っている。今日はその現場を見てい ただくのが大切だと思い、不便を承知でこの地にお見えいた
だいた訳である。もっとも、今日はかなりハードなスケジュ ールであるが、次回はゆっくり部屋に座っていただいて窓を
眺めながら、人類の未来と幸福とは何かを考えていただく機 会を持っていただければと思っている。
私は化学の分野で育ってきた人間であるが、北川先生と3年余いろいろな話をしながら著作権の大事さを、身を持って体験している。特に物理化学の分野では
15 年程前に大変なことが起きた。科学の分野ではその人のオリジナリティーをど う尊重するかということが非常に大事であるが、高温超伝導
の研究で成果の先人争いが盛んになり、研究者のオリジナリ ティーが無視されるような状況が起こった。その結果物理学
のモラルを駄目にしたとさえ言われたことがある。そういう
いろいろな意味で著作権という言葉の持つ意味は大切だということは存じている。このシンポジウムも、文化庁著作権法 100
周年記念事業の一環として、また日本学術振興会による 学術推進事業として、またここ財団法人国際高等研究所で行
っている「情報市場における近未来の法モデル」研究の一環として未来開拓の北川プロジェクトの発展という大きな目的
を持って開催される。この機会にもし時間があれば国際高等 研究所の中の雰囲気をも見ていただければと思っている。
私も北川先生の話に共鳴して物質コピーマートをすすめている。現在地球上に化学物質は約2200 万あるが、その一
つ一つがいかに大事かということを、身を持って体験した者として、そういうものもコピーマートという一つのフィールドの中に入れていただいて勉強している
のである。
今日は残念ながら途中で失礼することになるが、きわめ てタイトなスケジュールを司会の木下さんにうまくアレン
ジしていただき、よい会になることを願っている。以上、 所長にかわって歓迎の挨拶をさせていただいたが、今日は 一日どうぞよろしくお願いいたしたい。
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