生命の研究は二十世紀の後半、内容的にも社会との関わりにおいても、誰も予測しなかったほどに変化してしまいました。そして今も変化し続けています。
私はちょうどこの期間、遺伝子、DNA 、ゲノムの研究に携わり、この変化を体感する巡り合わせに生まれました。それは刺激に満ちた時間でした。
この本はそんな経験を基に、こうした生命の研究を推し進めてきた分子生物学について書いて見ようと試みているうちに、次第に自分の経験そのものを書いて
しまった「作品」です。科学者は科学の話は語っても、自分のことはあまり語らないものだとされていますが、書くほどに言いたいことが次々と出てきてしまっ
た……という感じです。
私がこれはするべきだ、これだけは何とかしたい、せめてこれは言っておきたい、ということを我慢してしまい込んで置くことのできない性格の人間に育って
しまったということがその原因でしょう。戦時中から終戦直後にかけて子供時代を過ごしたので、親達が「次の世代には……」と懸命に働いていた姿から受けた
刷り込みなのかも知れません。そんなことをするよりも、と言われながら、つい腕まくりをしてしまう癖も同じ根の上に生えているのでしょう。しかし、今もう
一度同じ事をやるかと聞かれたら、分からない、としか答えられないだろうと思います。 |