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まえがき
150億年前にビッグバンで誕生した宇宙は、現在も膨張を続けている。この膨張はいつまでも続くのか、将
来、膨張が収縮へと変わるのかということが、天文学の命題の一つである。しかし、ビッグバンについての有力な学説によれ
ば、膨張速度は最後には限りなくゼロに近づくが、膨張は止まることはないといわれている。これは、膨張が続く場合と収縮に転ずる場合の中間に当たる特別な
状態である。
考えてみれば、ビッグバンの後、間もなく宇宙が収縮を始めると、宇宙には星も銀河も生ま
れることができず、したがって我々も存在し得なかったはずである。逆に、膨張がとても速い 速度で進んでも、星や銀河のもとになる密度の
高い物質は、初期の宇宙からすぐなくなってしまったであろう。我々が存在しているのは、特別な条件でビッグバンが起きたためである。
人間が地上で誕生したのは、二酸化炭素の含
有量が特別な値になったためということは、本文中で述べるつもりである。人類など動物は、きわどい条件のもとで生まれ、生存しているのである。
国際高等研究所の講演会で話をした時は、「不思議なこと、不思議でないこと」という題
目であったが、題目は変わっても、内容は変わっていない。特別なことにも、不思議なものと、不思議でないものがある。不思議なことを不思議でなくすのが、
自然科学者の役目なのだろうが、最後まで、宇宙には不思議なことが残ると考えている。
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