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はじめに
19世紀末に誕生した現代物理学は、20世紀に飛躍的な発展を遂げ、ミクロの世界を解き明かし、物質の根源を明らかにしてきました。一方、その間の天文
学の発展も著しく、1世紀の間に宇宙の謎が次々と解明されました。
地上と天体の現象は同一の法則に従っているにもかかわらず、20世紀の後半までは物理学と天文学はそれぞれ別の学問として独自の発展を遂げてきました。
しかし20世紀が終りに近づくにつれて物理学と天文学の垣根が取り払われて両分野の融合が急速に進み、今ではほとんど同一の分野と考えられるようになりま
した。ミクロの世界を探る素粒子物理学と宇宙全体を扱う天文学が同一の基盤の上に立って論じられるようになったわけです。
宇宙のあらゆる物質は素粒子で構成されていますので、宇宙を素粒子的視点から見ることによって宇宙科学の新しい展望が期待できます。 新しい実験手段の
登場も素粒子物理学と天文学を結びつける大きな要因となりました。実験技術の急速な進歩によって、宇宙は素粒子研究のための実験室になったと考えることも
できます。また素粒子の研究のために開発された測定法は、そのまま宇宙を探求する手段として役立てられるようになりました。更に人工衛星などによって地球
の大気圏外に出て、宇宙から飛来する素粒子や電磁波を検出できるようになったことも2つの分野の一体化に重要な役割を果たしました。「宇宙素粒子物理学」
という新しい学問分野が生まれたわけです。
世紀末から新世紀にかけてこの分野の研究にとっての注目すべき出来事が相次いで起こりました。 WMAP衛星に搭載された測定器を用いて宇宙全体から飛
来する電波(宇宙マイクロ波背景放射)の詳細な測定が行われ、宇宙の始まりから現在に及ぶシナリオが示されました。これによって宇宙の将来も予見できるよ
うになりました。
クォークやグルーオンは物質を構成している素粒子ですが、単独では存在していません。しかし宇宙の初期にはばらばらな状態で存在していたと考えられ、そ
の状態を地上で再現する試みが進んでいます。
また長い間理論上の産物でしかなかったブラックホールの存在が観測的に確認されたのは20世紀末のことです。 高密度天体である中性子星、それが潰れてで
きるブラックホールは、超新星の爆発によって生まれると考えられていましたが、爆発のメカニズムは透過力の強いニュートリノを検出することによって初めて
実証されました。 ともあれ宇宙の謎が本当に解き明かされるのはこれからです。
重力の起源となっている重力波はまだ誰も捉えたことがありませんが、ブラックホール合体の時などに大強度の重力波が発生すると考えられており、その検出
に向けて準備が進んでいます。
宇宙には、私達の前に未だ姿を現さない「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」が私達の知っている物質やエネルギーの数10倍もあることが分って来ました。こ
れらの探索が21世紀の最も大きな課題です。
本書では素粒子的観点に立って宇宙がこれまでにどれだけ解明されたか、これから何が課題となるかを探ってみたいと思います。
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