本書は、「数学の難しい知識を易しく解説する」「知識・技術の書」というよりは、むしろ「易しいことの中に本質をくみ取り、難しいことがなぜ難しいかを
理解する」ための、いわば「(大人のための)知恵の書」であることを目指してできあがったものである。
本書を数学入門書として読んでいただく方々のために一言すれば、本書の内容はいわゆる数学の正しい順序・知識の順序に並んではいないし、厳密にいうとゴ
マ化してあると見えるところもある。話が前後するばかりでなく、同じ事を繰り返しているように感じられることもあろうし、年代など、歴史的考証もそんなに
正確ではない。
しかし、これは「数学を鳥の目で見るための必要素」「本来、言葉にはできない知恵を言葉にするための矛盾の現れ」だったと了解して、細かいところは大目
に見ていただきたいのである。よく教科書で行われるように、数学は決してバラバラに分解できるものではない。木を見て森を見ずといわれるように、近くに寄
り過ぎてしまえばバラバラに把握しなければならない数学も、「鳥の目で見れば」そのもとは一つなのである。さらにバラバラにしてしまうとき、山や森はその
本来の生命・活力を失ってしまうような気もするのである
。
実は、数学ばかりでなく「学問は一つだ、生きている」、「結局はそれを作る人間の知恵だ」、「それを見る鳥の目を養え」というのがIIAS(高等研)の
モットーであることはよくわかっているつもりであるし、IIAS(高等研)におけるプロジェクトがその方向に向かって走っているのは知っているのだが、そ
の全てに近づくのは私にはまだ時間がかかるようである。 |