出版物詳細カード
文 献No. S-8
著者名 南部 陽一郎
タイトル名 素粒子物理学の100年(Lecture)
内 容について ※本文の最初の文章を掲載いたします。
はじめに
 私が渡米してから47 年という月日が経ちました。もう半生以上をアメリカですごしています。私は大正生まれです が、私の周囲では、祖父祖母など明治または明治以前生ま れの人たちが一番古い世代でした。ですから私の心の中に は、昭和人は私や明治人より若い世代だという観念がありました。現在明治生まれの人もたまにはいらっしゃいます が、私の周囲では私が一番古い大正人というこになります。
  昭和にも戦前と戦後の区別があります。私は戦前と戦中に成人した世代ですが、われわれの世代以降の人たちに戦前と戦後が如何に違うかという話をしてもなか なか分かってくれません。目に見える物質的な違いよりも、ものの考え方といったような目に見えない違いの方が私にはずっと大きいと思われます。恐らく徳川 時代と明治時代の違いも同様だったでのではないでしょうか。
 そこで私は、これからお話することをすべての世代の方々にわかってもらえるように努力せねばなりません。
 私は戦時中に大學を二年半で繰り上げ卒業し、三年間軍 隊に入りました。しかし幸いにも戦地に赴くことはなく、 一年間工兵隊で訓練を受けたあと、陸軍の研究所でレーダ ーの研究に携わりました。最後に勤めた宝塚付近の研究所 では、大阪大學などの教授がたが研究に参加されていました。そのおかげで、一流の大學教授の方々に直接接触し、実際問題を一緒に考え、実地試験などにも参 加したのは貴重な経験でした。私は軍服を着ていたので、教授の方たち は私を“南部中尉殿”と呼びました。照れくさかったので すが、彼ら先生たちと私の関係は実に快いものでした。アメリカでも原子力研究に携わった若い人たちは世界一流の 学者たちと研究をともにすることで刺激され、有能な人々 が育ってきました。そう言う意味で私は非常に運がよかったと思っています。
  サイエンテイストはいつでも前向きの姿勢で楽天家です。 先のことしか考えません。特に若いときには、過去の業績 は一度知ったらもう興味をもちません。ところが、年を重ねていくうちに先輩たちの偉大な部分に気づきはじめ、過去を振り返ることの重要さをも悟るようにな ります。そこで今日は過去を振り返りつつお話をしようとおもいます。
頁 数 50頁
書籍版
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